ふるさと納税でワンストップ特例の申請を忘れた場合は手間がかかる?
ふるさと納税をやりたいけれど、確定申告が必要だからと諦めていませんか。実は確定申告をやらずに寄附金分を住民税から控除できます。それがワンストップ特例制度による控除です。この記事では確定申告に馴染みのない会社員の方向けにワンストップ特例を活用したふるさと納税とワンストップ特例の申請を忘れた場合について詳しく解説します。
ふるさと納税にあるワンストップ特例制度とは
「ワンストップ特例」を使えば会社員でも確定申告をせずに寄附金控除を受けられて全額住民税から控除できます。確定申告と聞くと会社員の方にとっては「面倒」「難しい」「休日の申告は混雑」というマイナスなイメージを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。今でこそマイナンバーカードとスマートフォンによるWeb申告ができるようになりましたが、まだわかりづらい部分も多く、確定申告に慣れていない方にとっては手間でしかありません。それを解消してくれるのが「ワンストップ特例」です。
では控除の仕組みはどうなっているのでしょうか。それを知るにはまず確定申告を選択した場合の控除の仕組みについて知る必要があります。
具体的な控除額の計算式は以下のとおりです。
所得税からの控除(①)
(寄附金額 - 2,000円) × 所得税率(所得金額により0~45%) × 復興税率*
控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
*復興税率は1.021で2037年末まで2.1%が上乗せされます。
住民税控除(基本分)(②)
(寄附金額 - 2,000円) × 10%
控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
住民税控除(特例分)(③)
(寄附金額 - 2,000円) × (100% - 基本分税率10% - 所得税率 × 復興税率)
住民税通知書から「住民税所得割額**」を確認します。控除の対象となるふるさと納税額は、この住民税所得割額の20%が上限です。上限を超えた場合は下記のとおりです。
**住民税所得割額とは課税所得金額の10%です。
(寄附金額 - 2,000円) × 20%
そしてワンストップ特例を適用すると所得税からの控除分(①)も住民税からの控除になります。所得税からの寄附金控除(還付)はなくなります。
住宅ローン控除とワンストップ特例
ワンストップ特例のポイントは所得税に影響を与えずに控除できることです。これが住宅ローン控除をしている方に大いに役立ちます。住宅ローン控除は年末のローン残高から控除額を割り出し、最終的な所得税から差し引く「税額控除」にあたります。そしてふるさと納税の寄附金控除もそれにあたり住宅ローン控除よりも優先的に控除されます。つまり、確定申告を選択すると、納めるべき税額を上回る金額の控除はできない(控除対象の金額が少ない)ため、住宅ローン控除を活かしきれない可能性があります。節税効果の高い住宅ローン控除を適用している方は所得税からの控除を住宅ローン控除に当てて、住民税からの控除をふるさと納税の寄附金控除に当てるという使い方が可能です。住宅ローン控除は所得税から引ききれない分は住民税から引いてくれます。寄附金控除はそれができないので無駄なく控除するにはワンストップ特例を使用しましょう。
ワンストップ特例制度を利用するための条件とは
ここではワンストップ特例を利用するための条件やワンストップ特例の適用の仕方を説明します。
ワンストップ特例の適用条件
・寄附先の自治体数が5つ以内
・2,000万円以下の収入
・住宅ローン控除が2年目以降
・医療費控除がない
重要なのは年末調整以外で追加の確定申告がないことです。
ワンストップ特例のやり方
・寄附金支払い時にワンストップ特例を申し込む
・寄附先の自治体から送られてきた申請書と本人確認の写し等を返送
メリットは、準備するものがほとんどなく、申請も寄附した翌年の1/10までにやればよいことです。Web申請できる自治体も増えてきています。そして何といっても確定申告をする必要がないことにあります。
デメリットは、申請に関してはほとんどありません。もしワンストップ特例の申し込みを忘れた場合は、申請書類をダウンロードするか自治体に送ってもらうようにしましょう。このように確定申告をするより時間を最小限かつ簡単にできるのがワンストップ特例です。
ふるさと納税でワンストップ制度の適用を忘れたらどうなる?
ワンストップ特例の申請は翌年の1/10までに申請書を寄附先の自治体へ郵送する必要があります。寄附する際にワンストップ特例を申し込んだだけでは適用されていることにならないので注意が必要です。申請は1つの寄附につき1申請です。もし、申請を忘れてしまった場合は、確定申告をしなければなりません。
確定申告での注意点
ワンストップ特例を申請済みの寄附分も含めて全て確定申告でやりなおします。
確定申告期限
最長5年までさかのぼって申告が可能です。ただし、その場合寄附金受領証明書は保管しておく必要があるでしょう。
ふるさと納税でワンストップを適用できない場合は確定申告を!
ワンストップ特例の適用条件に反することが挙げられます。
・寄附先の自治体数が6つ以上
・2,000万円を超えた収入
・住宅ローン控除が1年目
・医療費控除がある
忘れがちなのが住宅ローン控除を初めて適用するときです。初回は必ず確定申告が必要です。また、急きょ高額な医療費や保険外診療が発生することは予想できません。確定申告をして対応しましょう。
確定申告に必要な書類
申告会場で確定申告
・マイナンバーカード(持っていない人は免許証等)
・寄附金受領証明書
・源泉徴収票
・還付金の受け取り口座番号
・印鑑
メリットは、会場に税理士さんがいてサポートしてくれるため申告書類作成に時間はかかりません。
デメリットは、証明書等は紙面で提出するため全て保管しておくか無いなら印刷しなければなりません。そして何といってもほとんどの時間は何もしていないことです。足を運ぶのが面倒で平日に時間が取れないからといって休日に行くと大変混雑します。
役所で確定申告
・マイナンバーカード
・寄附金受領証明書
・源泉徴収票
・還付金の口座番号のわかるもの
・印鑑
メリットは、会場に税理士さんがいてサポートしてくれるため申告書類作成に時間はかかりません。その自治体の住民しか来ないのと受付が地区ごとになっていれば待ち時間が少なくて済みます。
デメリットは、証明書等は紙面で提出するため全て保管しておくか無いなら印刷しなければなりません。そして受付が地区ごとになっているがゆえに受付期間や時間が限定的で、平日に休みをとらざるをえない可能性が高いことです。
Webで確定申告
・NFC対応のスマートフォンもしくはカードリーダー&パソコン
・マイナンバーカード
・マイナポータルアプリ
・寄附金受領証明書もしくは記憶している合計金額
メリットは、家でできることで準備するものがシンプルな点です。証明書等の印刷物の提出も不要です。
デメリットは、マイナポータルでふるさと納税ポータルサイト企業との連携に手間がかかります。マイナンバーカードから寄附履歴を自動で申告額に反映させることができますが、電子寄附金受領証明書の発行申請というものが必要で3日くらいかかります。さらにそれを連携させるのがわかりづらいです。
確定申告を行う手順
確定申告をせざるえなくなった場合のために確定申告の大まかな流れを説明します。Web申告はe-Tax専用のID・パスワード方式もありますが、ここでは普及しつつあるマイナンバーカード方式で説明します。
Web申告の場合(マイナンバーカード方式)
①ふるさと納税ポータルサイト企業による電子寄附金受領証明書の発行(2〜3営業日)
②ふるさと納税ポータルサイト企業によるe-私書箱との連携設定
③マイナポータルによるe-私書箱との連携設定
④マイナポータルによるe-Taxとの連携設定
⑤国税庁の確定申告特集ページから「確定申告書等作成コーナー」にいく
⑥所得税の申告でマイナポータルから連携させて申告書を作成し送信
申告会場や役所にて申告の場合
①寄附した分すべての寄附金受領証明書の用意*
②勤務先から源泉徴収票を入手
③申告会場または役所の受付日時と場所の確認
④パソコンで申告書を作成
⑤書類の貼付などの整理
⑥申告書の印刷
⑦申告書および添付書類の提出
*紛失した場合は寄附先の自治体へ問い合わせてください。
まとめ
もしワンストップ特例を申請し忘れてしまうと確定申告をしなければなりません。説明してきたとおり確定申告には手間が生じます。以下に当てはまる場合は、迷わずワンストップ特例を選択しておきましょう。
・手広く様々な自治体を選ぶつもりはない
・確定申告をやる必要がない
・手間をかけたくない
当初ワンストップ特例で申請していたのにも関わらず、自治体数が6つ以上になったり、急きょ医療費控除などの確定申告が必要になった場合は、確定申告をやればワンストップ特例は自動で無効化されます。したがって寄附する際はとりあえずワンストップ特例で申し込んでおいて、申請は確定申告が発生しないことを確認できてからでもよいでしょう。
会社員の方は特に、自由に動ける時間が限られているためワンストップ特例をおすすめします。寄附をするときは忘れずにワンストップ特例を申し込みましょう。
いかがでしたか?ワンストップ特例を使えば手軽にできるようになりませんか?今までふるさと納税を諦めていた方も是非活用してみてください。